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札幌地方裁判所 平成8年(ワ)277号 判決

呼称

原告

氏名又は名称

株式会社マキタ

住所又は居所

北海道帯広市西一五条南四丁目七番一号

代理人弁護士

太田勝久

代理人弁護士

尾崎祐一

代理人弁護士

菅野直樹

呼称

被告

氏名又は名称

北海板金工業株式曾社

住所又は居所

北海道札幌市豊平区里塚一一〇番地一二

呼称

被告

氏名又は名称

株式会社サン工業所

住所又は居所

北海道札幌市東区東苗穂三条三丁目一番二七号

呼称

被告

氏名又は名称

株式会社アサヒ金物

住所又は居所

北海道帯広市西三条南二六丁目四番地

代理人弁護士

田中燈一

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、原告に対し、連帯して、一五〇〇万円及びこれに対する平成八年二月一五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告北海板金工業株式曾社は、別紙二及び同三の形状の雪止装置付き屋根板を製造・販売してはならない。

3  被告株式会社アサヒ金物は、別紙三の形状の雪止装置付き屋根板を製造・販売してはならない。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

5  1につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者の商品

(一) 原告らの商品

原告は、平成元年、マキタ式スノーストッパールーフと称する雪止装置付き横葺屋根板(以下「本件屋根板」という)を開発し、販売を開始した。

本件屋根板の内容は、以下のとおりである。

本件屋根板は、別紙一のとおりであり、長尺の成型板に、成型板の接続部分を下方に向かってL字型に折り曲げて屋根に垂直になる雪上部分(高さ四五ミリメートル)と、それに接続して屋根に平行となる部分(長さー五ミリメートル)とを設けて、雪止装置を作り、接続部分を約三〇センチメートル間隔で走らせる方式(横葺方式)をとることにより、屋根に積もった雪を分散して、風でとばし、雪解水は、成型板を微妙に傾けることにより、どちらかに流すことができる。

(二) 被告らの商品

被告北海板金工業株式曾社(以下「被告北海板金」という)は、現在、別紙二及び同三の形状の屋根板(別紙二の形状の屋根板の商品名は「ステイルーフスタンダード」、別紙三の形状の屋根板の商品名は「ステイルーフスペシャル」である)を製造・販売している。被告株式会社アサヒ金物(以下「被告アサヒ金物」という)は、別紙三の形状の屋根板(商品名「ラムダ三〇」)を製造・販売している(以下これらの商品を総称して「被告ら商品」という)。

2  本件屋根板の形態の出所表示性及び周知性

以下の各事実によれば、本件屋根板の形態は、不正競争防止法二条一項一号所定の原告の商品であることを示す表示として、周知されるに至ったものということができる。なお、商品形態それ自体が、技術的機能に由来する場合であっても、不正競争防止法によって「商品等表示」として保護されるのに妨げになるものではない。

(一) 本件屋根板の形状

本件屋根板の形状は、前記のとおり、本件屋根板のハゼ部分(別紙一の高さ四五ミリメートルの垂直部分)が雪止機能を有するものである。本件屋根板は、販売後間もなく建築業界一般及び需要者の間において、マキタ式スノーストッパールーフと称されるに至り、右形態自体が他の形状の屋根板との識別機能を有し、製造者自体を表示する機能を有するに至った。

(二) 市場占有率

本件屋根板は、全国で初めて成功した雪止装置付き屋根板(以下「雪止屋根板」という)であり、開発当時の市場占有率は一〇〇パーセントであった。市場占有率は、現在も九割を占める。

(三) 広告活動

原告は、昭和六二年ころから本件屋根板の研究開発に取り組み、その施工結果については、注文者、建物全体を請負った工務店、設計事務所から高い評価を得てきた。

本件屋根板は、北海道新聞、十勝毎日新聞その他の新聞、マスコミ等で報道され、道内の全世帯に配付される北海道庁の広報誌にも頻繁に紹介され、原告には消費者や工務店から問い合わせが殺到した。

(四) 営業活動

さらに、原告は、本件屋根板の製造販売を欲する者に対しては、本件屋根板を製造する機械(成型機)を賃貸する方法で本件屋根板を広め、販売圏を北海道全域から東北地方まで拡大したりその結果、本件屋根板は北海道全域のみならず、東北地方でも周知されるに至った。

3  被告らの商品と本件屋根板の類似性

被告ら商品は、いずれも本件屋根板と同様、ハゼ部分(別紙工では高さ一五ミリの突起部、同三では高さ三〇ミリの突起部)に雪止機能を持たせており、本件屋根板と高度の類似性がある。

4  被告北海板金及び同アサヒ金物の混同惹起行為

(一) 被告らは、本件屋根板が需要者一般に周知されてから、被告ら商品の販売を開始し、原告と被告らとが競業関係にあることもあって、以下のような混同が惹起されており、今後も混同のおそれは高い。

(1) 被告北海板金の商品との混同

▲1▼ 工務店やハウスメーカーから、札幌の屋根施工業者である株式会社ヤネヤに対し、ステイルーフについて、「マキタのスノーストッパールーフと類似した製品であり、使って大丈夫か」等問い合わせが多数あった。

▲2▼ 有限会社畠沢板金が、平成八年三月ころ、屋根板工事を施工した際、ステイルーフを使用した。施主から新築工事全体を請負った工務店に対し、「マキタのものを使ってほしいと言ったのに、ものが違う」とのクレームがあった。

(2) 被告アサヒ金物との混同

一般消費者から、原告及び原告から本件屋根板の製造販売を認められている株式会社三原商店に対し、ラムダ三〇について、「マキタ式とラムダは違うのか」等問い合わせが相次いでいる。

(3) 財団法人北海道建築指導センターに対する問い合わせ

財団法人北海道建築指導センターに対し、本件屋根板と被告ら商品が同じかどうか、多数問い合わせがあった。

(二) 不正競争防止法二条一項一号にいう混同とは、出所が同一だと思わせる混同(狭義の混同)だけではなく、両者に何らかの関係があるのではないかと思わせる混同(広義の混同)も含むのである。被告サン工業所は、原告、被告北海板金及び被告アサヒ金物のいずれとも成型器の製造につき商売上の取引関係があるから、このことを知っている屋根板業者や住宅メーカーが、原告及び被告らが雪止屋根の研究開発について、何らかの関係があるのではないかと思う具体的危険性がある。

5  営業上の利益侵害又は侵害のおそれ

原告の営業上の利益は、本件屋根板と被告ら商品が混同されることにより侵害され、今後も侵害されるおそれがある。

6  被告株式会社サン工業所(以下「被告サン工業所」という)の行為

被告株式会社サン工業所(以下「被告サン工業所」という)は、被告ら商品の製造に必要な成型機を製作し、被告北海板金及び同アサヒ金物に販売することにより、右被告らの不正競争を幇助した。

7  責任及び損害

被告北海板金及び被告アサヒ金物は、本件屋根板が需用者の間に広く普及し、形態それ自体によって商品表示性を有するに至っていることに注目し、原告の研究開発にただ乗りして、これと同一又は類似の商品を製造販売したものであるから、被告らには、不正競争行為につき、故意又は少なくとも過失があり、右製造販売行為によって原告が被った損害を賠償する義務を負う。そして、被告ら商品の製造に必要な機械を製作した被告サン工業所には、被告北海板金及び被告アサヒ金物らの不正競争を幇助したことにつき、故意又は少なくとも過失がある。

原告の損害は、一五〇〇万円を下ることはない。

8  よって、原告は、被告らに対し、不正競争防止法四条並びに民法七一九条一項及び二項に基づき、連帯して、損害賠償金一五〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成八年二月一五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、被告北海板金に対し、不正競争防止法三条一項に基づき、別紙二及び別紙三の形状の雪止屋根板の製造・販売の差止、被告アサヒ金物に対し、不正競争防止法三条一項に基づき、別紙三の形状の雪止屋根板の製造・販売の差止を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

1  請求原因1(一)のうち、工法が横葺きであることは否認するが、その余は知らない。

同(二)は認める。

2  同2の冒頭部分は争う。

同2(一)は否認する。雪止屋根板は、原告固有の商品ではなく、その形態にも出所表示機能は認められない。

同2(二)は争う。

同2(三)及び(四)は知らない。

3  同3は否認する。

以下のとおり、両者の類似性は認められない。

(一) 成型材(平らな鉄板を成型機にかけてできた屋根材)の形状でも、完成して葺きあがった屋根の形状でも、本件屋根板と被告ら商品との間に類似性はない。

(二) 原告は、本件屋根材に用いる屋根板材をヨドコウのGLカラーTenに指定しているが、被告らの商品は、どの会社のものでも用いることができ、材料費が安くつく。

(三) 本件屋根板の施行方法は、四・五センチメートルのL字型のツノ部分のある屋根板材(屋根板のハゼ部分)を一つずつ防水テープ(シーリング)で密着させ、機械で締め付けるという工法である。いわゆるアリ掛け葺き方法であり、本来、縦葺に属する工法である。これに対し、被告ら商品は、締め付けずに、屋根材と屋根材を組合わせるだけで、空間を各屋根材の間に作り、空気層によって結露を防ぐ工法であって、要するに屋根材の上縁被接部を下縁被接部でひっかけて葺き上げるだけの横葺方式であり、両者は異なる工法である。

4  同4(一)(1)は知らない。

同4(一)(1)▲2▼は否認する。

同4(一)(2)は知らない。仮に記載の事実があったとしても、「混同」にはあたらない。一般消費者は、一見明らかに違うからこそ両者の性能の差を問い合わせているものである。

同4(一)(3)は知らない。

同4(二)は争う。

「スノーストッパールーフ」も「ラムダ三〇」も、ともに住宅等の屋根材であり、それ自体が商店等の店頭に展示されており、顧客が商品の表示、形状のみを見て購入するものではなく、必ず販売店を通じての対面販売となるのであるから、消費者が本件屋根板と被告ら商品とを混同するおそれはない。

また、北海道において屋根板を成型する業者は、被告サン工業所のほか一社しかない。北海道内の板金業者は、すべてこの二者のうちの一社又は二社とも取引をしている。したがって、被告サン工業所と取引関係があることをもって、直ちに原告と被告らとの間で雪止屋根の開発につき、何らかの提携関係があると考えることはあり得ない。

5  同5は否認する。

6  同6は被告サン工業所が被告北海板金及び被告アサヒ金物に成型機を販売したことは認めるが、その余は否認する。

7  同7はいずれも否認する。

第三  証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  証拠によって認める事実

1  本件屋根板の形態

本件屋根板の形態は、別紙一のとおりであって、亜鉛とアルミニウムの合金メッキ鋼板(ガリバリウム鋼板)で作られた屋根板成形板に、成形板の接続部分を下方に向かってL字型に折り曲げ、屋根に垂直になる高さ四五ミリメートルの雪止部分とそれに接続する屋根に平行な部分(一五ミリメートル)とを成型して雪止部分を作り、雪止部分の間隔を三〇センチメートルにして横葺きにするというものであり、「マキタ式スノーストッパールーフ」と命名されている。本件屋根板は、ハゼ(屋根板の接続部分)部分を横葺きにして雪止方法として活用することに新規性がある。

(甲二〇の一ないし8、三九、原告代表者)

2  原告の本件屋根板の販売方法、範囲及び実績

(一)  原告は、昭和六三年から平成元年にかけて本件屋根板を開発した。当初は、十勝地区で販売を行う予定であった。平成二年一月に本件屋根板が北海道新聞に紹介されると、北海道内の各地から問い合わせあり、施工を求められるようになった。しかし、本件屋根板は、その形状からして、原告が製造・梱包した上、各地に搬送するという販売方法をとることは困難であった。原告は、各地の業者と特約店契約を締結し、特約店に本件屋根板を製造するために必要な成型機を賃貸し、特約店が本件屋根板を製造・販売して、特約店の売上げに応じて成型機の使用料を徴収する方式を採用した。具体的には、平成二年三月ころ、帯広の株式会社三原商店、札幌の青木鋼商株式会社、函館の株式会社ヤマキ小林、旭川のコサカ機材株式会社とスノーストッパールーフ特殊成型機の賃貸借を内容とする特約店契約を締結した。さらに、平成六年一二月になって、岩手県北上市の株式会社北洲とも同様の特約店契約を締結した。本件屋根板は、東北地方でも販売されるようになった。

(甲五ないし九、二六、三二、三九、原告代表者)

(二)  原告は、自身又はその特約店が購入者に対し、機能・施工方法・費用・期間等について説明をした上で販売するという対面販売方式で、本件屋根板を販売した。一般に屋根板は、建築業者を介して施工されることから、原告の直接の顧客層も建築業者が中心であった(ただし、本件屋根板の施工対象となる屋根は一般家庭の屋根が中心であることから、一般消費者が直接原告に対し、本件屋根板の性能等について問い合わせたり、見積りを依頼したりすることもあった)。

(甲三九、原告代表者)

(三)  販売方法及び実績

本件屋根板の販売地区は、北海道内及び東北地区であり、その売り上げの詳細は、別紙四記載のとおりである。

すなわち、平成元年度から平成八年度までの本件屋根板の総販売数は、四三八四棟である。その内訳は、札幌及び道央地区で一八九三棟、道東地区で一二〇八棟、道南地区で九四四棟、北網地区で五四棟、道北地区で五五棟、東北地区で二三〇棟である。平成七年度及び平成八年度と販売数が急増した(特に札幌及び道央地区では、平成六年度に一五八棟であったものが、平成七年度には四九三棟に、平成八年度には一八九三棟に増えている)。

ちなみに、被告北海板金のステイルーフの昭和六三年から平成八年までの総販売数は、一三三棟であるが、平成七年に二八棟、平成八年に九七棟が札幌地区を中心に販売されており、実質的には平成七年以降の販売数がほとんどである。被告アサヒ金物のラムダ三〇は、平成七年及び平成八年の二年間で合計八〇棟が十勝地方で販売されている。

(甲二四、三九、乙四の1、五)

3  宣伝・広告関係

(一)  新聞報道

本件屋根板に関しては、別紙五のように、平成元年一二月一七日以降、北海道内及び東北地方において、十勝毎日新聞等の新聞各紙で度々報道がされている。その中には本件屋根板の構造的特徴(長尺のトタン成型板を使用して、高さ約五センチメートルのはぜを三〇センチメートル間隔で走らせる)を挙げているものが多く見られるが、本件屋根板の形態を写真、図面等で示した記事ではなく、雪止屋根一般に関する記事の中で本件屋根板についても言及しているに過ぎないものも見られる。

(甲四の1ないし25)

(二)  本件屋根板は、平成四年に発行された、道内に配付される北海道庁の広報誌「ほっかいどう」にも、工法等に工夫や改良を加える道内の業者の一つの商品として紹介されている。

(甲四の26)

(三)  原告は、平成四年一月五日、北海道住宅新聞に本件屋根板の広告を掲載した。この広告には、本件屋根板を取り付けた建物の写真も掲載された。

(甲四の13)

(四)  原告が作成した会社案内にも、本件屋根板が図解され、施工例が写真とともに紹介されている。

(甲三一)

(五)  原告は、「急勾配でも無落雪。マキタ式スノーストッパールーフ」と題する本件屋根板のパンフレットを作成し、特約店に二〇〇〇部ずつ配付し、ユーザーや一般設計事務所、建築業者等に交付するよう依頼した。このパンフレットには、雪止機能をになうハゼ部分が図解されるとともに、本件屋根板の特徴が簡略に記されていた。原告は、このパンフレットを各種展示会で配布したり、道立建築指導センターに備え置いたりもした。

(甲三三、乙一の1、2、原告代表者)

(六)  原告は、その他、平成二年一〇月と平成七年九月に、北方型住宅情報展示会「塗料・塗装・屋根展」に本件屋根板を出展する活動もした。

(甲四の9、27)

二  前項認定の事実を前提に本件屋根板が不正競争防止法二条一項一号所定の要件を具備するか否か検討する。

1  不正競争防止法二条一項一号にいう「商品等表示」とは、氏名、商号、商標等に限られず、他人の商品又は営業を示すものとして需要者の間に広く認識されているもの一般を指すと解されるから、商品の形態自体は、本来商品の出所表示を意図したものではないが、それが特定の者の商品又は営業を指すものとして周知されるに至ったものである限り、不正競争防止法によって保護される。そして、商品形態が周知表示性を帯びるためには、商品の形態が、需要者の感覚に端的に訴える独自の意匠的特徴を有し、需要者が一見して特定の営業主体の商品であることを理解することができる程度の識別力を備えたものであり、かつ、当該商品の形態が長期間特定の営業主体の商品に排他的に使用され、又は、当該商品が短期間でも強力に宣伝広告される等により周知性を取得したものであることが必要であると解すべきである。

2  これを本件について見るに、(一)本件屋根板の形態の特徴は、前示のように、屋根板の接続部分を折り曲げて雪止突起を作った点、屋根板接続部分を横葺きにした点であるが、右特徴は、雪止のための設備という構造的・機能的特徴と不可分であり、形態自体がそれ以上に需要者の感覚に訴える独自な章匠的特徴を有するものか否か疑問である(本件屋根板に対する需要者の主な関心は、雪止機能に向けられていると考えられ、屋根板自体の形状や横葺きにした時の外観が特に重視されているとはうかがえない)、(二)また、本件屋根板の開発は、平成元年ころ行われたが、その販売が北海道・東北地区で軌道に乗り始めたのは平成七年ころからのことであり、それまでの販売数自体は多いとはいえないし、平成七年以降の販売数も、それ以前に比べれば急増しているが、建築された棟数に占める割合は僅かなものと推測されるのであり、本件屋根板が大量に販売されてきて、本件屋根板の形態が長期間原告の商品に排他的に使用されていたとか、短期間でも強力に宣伝広告されてきたとか認めることは困難である(本件屋根板は、平成元年から現在まで、北海道内及び東北地方において度々新聞等で報道されてきたが、新規性あるいは将来性のある事業としての紹介が中心である。本件屋根板が社会的関心を引いたとは言えても、周知性を有したとは言い難い(形態を写真、図画等で表示している記事は多くなく、雪止屋根一般に関する記事の中で本件屋根板についても言及がされているに過ぎないものもある)。さらに、原告自身による宣伝広告活動は、パンフレットの作成程度であって、定期的に広告掲載やコマーシャルの放映などの宣伝行為をしたことを認めるに足りる証拠もない)。

3  したがって、本件屋根板は、不正競争防止法二条一項一号所定の周知性を具備しているとまでは認めることができず、本件屋根板の販売について、不正競争防止法所定の保護に値する周知性が形成されたとは言えない。

三  結論

よって、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林正明 裁判官 田代雅彦 裁判官 山本由美子)

別紙一

〈省略〉

別紙二

〈省略〉

別紙三

〈省略〉

別紙四

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙五

1 平成元年一二月一七日付け十勝毎日新聞の「全道普及に道開く。寒地住宅研がデータ収集―マキタの新型無落雪屋根」と題する記事(本件屋根板は、その写真とともに紹介されている)

(甲四の1)

2 平成二年一月九日付け北海道新聞の「勾配屋根でも無落雪」と題する記事

(甲三二)

3 平成二年四月一九日付け十勝毎日新聞の「マキタ板金工業 薪型無落雪屋根普及へ 道内四都市に専用成型機」と題する記事

(甲四の3)

4 平成二年一二月一二日付け十勝毎日新聞の「無落雪屋根を開発」と題する記事

(甲四の4)

5 平成二年一二月一三日付け十勝毎日新聞の「急こう配でも大丈夫、マキタ板金工業無落雪屋根を開発」と題する記事(本件屋根板は、その写真とともに紹介をされている)

(甲四の5)

6 平成二年一二月一八日付け北海道新聞の「急こう配無落雪屋根の開発―道立寒地住宅都市研で進める」と題する記事(この記事事体は無落雪屋根一般に関するものであるが、その中で本件屋根板についても 及がされている)

(甲四の6)

7 平成三年一月三〇日付け十勝毎日新聞の「先日の大雪で実証 マキタ板金工業の無落雪屋根」と題する記事(この記事の中では、本件屋根板の写真も掲載され、あわせて、一八日の豪雪にも耐え、性能の高さが証明された「スノーストッパールーフ」との解説がされている)

(甲四の7)

8 平成三年三月 七日付け十勝毎日新聞の「ザ・住宅  中」と題する記事(この記事の「外壁・屋根」の項目の中で本件屋根板について言及されている)

(甲四の8)

9 平成三年一〇月 〇日付け十勝毎日新聞の「マキタ板金が無落雪屋根展示」と題する記事

(甲四の9)

10 平成三年一一月五日付け北海道住宅新聞の「勾配屋根の美観を生かし 無落雪に改修 マキタ板金工業」と題する記事(この記事の中では、本件屋根板の仕組みが図解されている)

(甲四の10)

11 平成三年一二月四日付け十勝毎日新聞の「受注大幅に伸びる マキタ板金の無落雪屋根」と題する記事

(甲四の12)

12 平成五年八月三〇日付け北海道新聞(夕刊)の「無落雪屋根 東北進出へ 板金業の『マキタ』が開発 豪雪地帯でも通用」と題する記事(この記事の中では、本件屋根板を取り付けた家屋の写真も掲載されている)

(甲四の14)

13 平成五年八月三一日付け北海道新聞の「高齢者の負担軽減」と題する記事

(甲四の15)

14 平成五年九月一日付け北海道新聞の「無落雪の屋根 東北進出へ」と題する記事(12と同じ記事である)

(甲四の15)

15 平成五年九月一日付け十勝毎日新聞の「ズームアップ 十勝の企業 マキタ」と題する記事

(甲四の17)

16 平成六年一一月五日付け日本経済新聞(東北版)の「落雪しない屋根を販売」と題する記事(本件屋根板を使用した屋根の写真が掲載されている)

(甲二五、原告代表者)

17 平成六年一月一八日付け十勝毎日新聞の「マキタの無落雪屋根 実用新案に登録」と題する記事

(甲四の18)

18 平成六年二月四日付け北海道新聞の「ビジネス 住 屋根の雪対策に知恵」と題する記事(この中で本件屋根板について触れている)

(甲四の19)

19 平成六年八月一八日付け十勝毎日新聞の「東北六県に  マキタの無落雪屋根」と題する記事(本件屋根板を使用した屋根の写真が掲載されている)

(甲四の20)

20 平成七年三月一五日付け東 日報(本社・青森市)の「新タイプの『勾配屋根』登場」と題する記事(この記事事体は無落雪屋根一般に関するものであるが、その中において、本件屋根板について言及がされている)

(甲四の21)

21 平成七年三月三〇日付け北見新聞の「『無落雪屋根』普及へ」と題する記事

(甲四の22)

22 平成七年九月二六日付け十勝毎日新聞の「管内からマキタ、ヤマウチ建装が受賞 発明協会支部長賞」と題する記事(この記事の中で、原告が本件屋根板の発明により社団法人発明協会北海道支部の支部長賞に選ばれた旨紹介されている)

(甲四の23)

23 平成七年一〇月七日付け北海道新聞の「落雪防止装置考案のマキタ、発明協会支部長賞に」と題する記事(記事の内容は22のものと同趣旨)

(甲四の24)

24 平成七年一〇月六日付け十勝毎日新聞の「アイデアと工夫光る」と題する記事(記事の内容は22のものと同趣旨)

(甲四の25)

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